地域おこし協力隊レポート「藻谷浩介氏講演会~里山資本主義と日本の未来~」

緑区のストーリー ミウルのX(旧Twitter)
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地域おこし協力隊レポート「藻谷浩介氏講演会~里山資本主義と日本の未来~」

2023年12月8日に百笑の台所・結びの家にて開催された藤野エリアマネジメント主催の「藻谷浩介氏講演会」へ参加しました。

株式会社日本総合研究所 主席研究員を務める藻谷さんは、「里山資本主義と日本の未来」と題したテーマで、参加者と共にリズミカルに話題を展開していました。藻谷さんは、国内海外を問わず、全世界を飛び回っているそうです。

では、インターネットがある時代に、なぜ現地へ赴くのでしょうか。藻谷さんはその理由を5つ挙げていました。

視覚:画面と違い、視野の端の情報が面白い
聴覚:人の雑談、場の雑音、静寂が楽しい
嗅覚:四季の匂い、その場の匂いを感じたい
触覚:風、熱、手触り、揺れ、加速度が不可欠
味覚:味、歯ざわり、そして食の場は一期一会

そして、その中でも一番重要なのは触覚であると語っていました。
それは、肌感覚で空気を知ることは視覚や聴覚による読書等に勝るものという意味です。

特に印象的だったのは、さまざまなクイズを通じて、参加者へ問いを投げかけるスタイルです。

たとえば、相模原市緑区より小さい国は、何カ国あるか?という問いです。

正解は20カ国ですが、藻谷さんは
「どんなに小さくとも国家ならば国連に議席があり、国際問題では自国の意見を問われる。」と説きます。つまり、相模原市緑区というひとつの区でも、国家ならばより高度な意思決定を求められるという意味でしょうか。

また、2010年から2020年に最も売上の伸び率の高かった産業はなにか?という問いも興味深かったです。

正解は林業であり、その理由は自給率が低く伸びしろがあり、SDGsの時代に木材利用が再評価されたためと説きます。また藻谷さんは「木が増えているのは日本だけという話もある」とも語っていました。

全体を通じて藻谷さんは「みんなが言っていることを鵜呑みにして自分の考えになってしまう」現状に警鐘を鳴らしていました。「みんなが言っている=正解ではない」と語る藻谷さんは「その人自身がどう感じるかが大事であり、自分自身で確認することが大事」だと説きます。それが国内国外問わず、「現地で確認する」スタイルに繋がっているのではないでしょうか。

藻谷さんはその地域の暮らしやすさの一指標として「住民ひとりあたりの生活保護費」を挙げていました。2014年の住民ひとりあたりの生活保護費が最も高いのは大阪市であり、逆に最も低いのは山梨県町村平均だったそうです。これを藻谷さんは「お金以外の資本があると生活がしやすい」と解説します。

そして藻谷さんは「利子とは元本を壊すことがなく得られるもの」と言います。たとえば、ゼロ金利時代に投資をしても、利子には頼ることはなかなか難しいものです。そこで藻谷さんは「お金以外の資本をフルに使う=里山資本主義」であると説きます。

資本には「人的資本(ヒト)」、「里山資本(農地、山林、海や川)」、「物的資本(モノ、建物、街)」、「金融資本(カネ)」、「知的資本(情報)」があります。

その上で藻谷さんは「自然利子に背を向け、金融投資の利子だけに頼る東京人は、将来不安から逃げられない」と警鐘を鳴らし、「東京は極端に人口が密集しているため、森や農地などの里山資本は乏しく一人あたりの食料生産も、水も、自然エネルギーの量も少ない状況にあり、自分で生産できない地域柄、物々交換や贈与が不活発であると同時に、お金に100%依存した生活なので、老後の生活に大きな不安が出る」と説きます。

逆に金融資本以外の物々交換といった人的資本や自然の恵みを得て生活する里山資本を使えば、暮らせないことはないのでしょう。

我が国は今後経験したことのない人口減少社会に突入しつつあります。ただ藻谷さんは、「それでも日本の地方は世界的に見れば超人口高密度」と話しており、どういった形で地域のヒト・モノ・カネの持続可能性を維持していくかが今後の課題となるのだと感じました。

藻谷さんのお話は、終始和やかかつリズミカルなテンポで、3時間があっという間の講演でした。参加者も熱心に藻谷さんの話に聞き入っており、とても充実した時間でした。