地域おこし協力隊レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(前編)

緑区のストーリー ミウルのX(旧Twitter)
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地域おこし協力隊レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(前編)

今回は、森のイノベーションラボFUJINO(以下森ラボと呼称)のバリアフリープロジェクトにて実施しているロボット開発レポートの前編をお送りします。

JR中央線の藤野駅徒歩3分に立地するテレワークセンターと中山間地域の交流拠点の両面を併せ持つ、森ラボでは、2024年6月現在、19のプロジェクトがあり、プロジェクトごとに様々な取り組みを行っており、2023年10月に着任した地域おこし協力隊の拠点でもあります。

バリアフリープロジェクトの趣旨は「社会の中にある様々な「バリア」とは何かを考え、その解消を目指す手法や、バリアフリー社会に向けた取り組み」です。そうしたバリアを取り除くべく、ロボット開発に取り組んできた高校生である篠部虹人(ささべ にじと)君の取り組み、また森ラボや地域おこし協力隊との協働をレポートします。

まず、篠部君をロボット開発へと突き動かしたのは、幼い頃より親交のある友人のお母様のがんの発覚でした。当時は、新型コロナウイルス感染症が流行していたことも重なり、家族も直接お見舞いに行けず、その友人は「いま母はどうしているのか」といった不安な気持ちが常にあったと聞きます。

そんな時、そのお母さんより「ベッドの上から家族と一緒に食卓を囲んだり、授業参観に出席したりしたい」というメッセージが届きます。そこで篠部君は、「離れている家族をつなぐ、コミュニケーションロボット」の機能を有する「ロボくま」の開発に着手します。

しかし、開発も佳境となっていたある日。プレテストの12時間前に、その友人のお母様は、この世を旅立たれました。そしてロボくまの開発はストップ。篠部君は当時を「とてもショックで、誰のために作っているのかが、わからなくなってしまった。」と語ります。ただ、篠部君は、そのお母様の死というショッキングな出来事を目の当たりにした時に、改めてロボット開発の原点を思い直します。「このロボットは離れている家族を繋ぐコミュニケーションロボットであり、他にも困っている患者さんやそのご家族が沢山いる。そうした人に早くプロダクトを届けたい。」と思い直し、ふたたびロボット開発へ取り組むようになりました。

突然の友人のお母様の死、開発がストップした「ロボくま」、そして再始動を経て、篠部君が新しく取り組み始めたのは、ハグという行為に着目してデザインを考案した「ハグボット」の制作です。ハグという行為に着目したのは、ハグは人間のコミュニケーションのなかで最も親密と言われているためです。

ですが、ふたたび大きな壁が立ちはだかります。当時高校2年生だった篠部君には、ロボットを開発する資金力も、技術力もありませんでした。篠部君はさまざまな人に相談を重ね、森ラボのコミュニティーマネージャーを務める高橋靖典氏と出会います。

高橋氏が提案したのは、森ラボでのプロジェクト化と、相模原市が主催するSDGs連携推進事業補助金でした。この補助金は、市内のSDGsパートナーとの連携を通じて、SDGsの達成や地域課題の解決に向けて先進的に取り組む事業に対してその費用を補助するものです。医療や介護といったSDGsパートナーと組むことで、より実践的に利用者の声を聞き、実態に即したロボット開発に取り組めるのではないかと提案を受けたのです。

同補助金の採択が決定し、まずは、ひとつの壁であった資金を獲得することに成功しました。

(後編へ続く)