地域おこし協力隊レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(後編)

緑区のストーリー ミウルのX(旧Twitter)
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地域おこし協力隊レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(後編)

今回は、森のイノベーションラボFUJINOのバリアフリープロジェクトにて実施しているロボット開発レポートの後編をお送りします。

相模原市SDGs連携推進事業補助金の採択を受け、資金面の壁を乗り越えたものの、いまだに技術面の壁や実証面での壁が残っていました。

その壁を突破したのは、地域おこし協力隊との協働でした。組み込み系システムエンジニアの経歴を持つ地域おこし協力隊員の中島竜馬の力を借り、Raspberry Piという小型PC上でセンサーを制御するプログラミングを実施しました。このRaspberry Piにスピーカーやカメラ、マイクなどのセンサー類を組み込み、その後、ビデオ通話システムを使用してインターネットを介した遠隔地とのコミュニケーションが実現しました。技術面での壁はこの協働により、乗り越えることが出来たのです。

さらに、スピーカーやカメラといったセンサー類がなるべく目立たないように、外装にあたる衣装を作り、より親近感や温かみを出す工夫をしました。全体を覆う白地の生地をベースに、交換可能なエプロン等の衣装を用意しました。

そして、2024年に晴れて「ハグボット」は完成しました。

しかし、まだ残っている実証面での壁がありました。これは医療介護政策に知見がある地域おこし協力隊の相田直樹と協働し、相模原市みんなのSDGs推進課のご担当者様のお力も借り、同市SDGsパートナーでもある株式会社泉心会メディカルサービス様が運営している住宅型有料老人ホームにて実証実験を行わせていただくことが決まりました。オンライミーティングにて実証実験の詳細を詰め、同年3月11日には実際に住宅型有料老人ホームを訪問し、実証実験を行いました。

まずは、施設管理者の方に対して、「ハグボット」の趣旨や機能の説明を行い、「介護者の視点」でフィードバックをいただきました。「監視カメラではなくロボットだと利用者の皆様の抵抗感が少ない」、「遠方にいるご家族が、リアルタイムで状況を把握できる上、しかも会話できるのは大きい」、「ハグボットは居室に置き、それをモニター越しに、まとめて見守りたい」といった介護者の視点での貴重なご意見をいただきました。こうした実際の介護に従事されている方のご意見は、ロボット開発をする上で、新しい気づきを得るきっかけにもなりました。

そして、実際に入居者様のもとへ、「ハグボット」を持ち込み、実証実験を行いました。

特に印象的だったのは、入居者の皆様が「ハグボットにぬいぐるみやペットのような愛玩性を感じられていた」点です。入居者の皆様が、職員の方とタブレット端末越しに会話をしたり、ハグボットを抱っこしたりしていくなかで、ロボット自体に愛らしさを見出して「もう行っちゃうの」や「かわいいね」といった言葉をかけていた姿です。それは「ハグボット」が目指していた世界観とマッチしていると感じました。

森ラボバリアフリープロジェクト、プロジェクトリーダーの篠部君は、「高度情報化社会のいま、効率化を求めすぎると誰にも頼らない社会になってしまう。ひとりで生きていける世の中に、あえてロボットを介して人との繋がりを作っていきたい」と語ります。それは従来、人間やロボットが追い求めてきた効率化のアンチテーゼとも受け取れます。

SDGsには「誰一人取り残さない」という原則があります。疾病や障害を有する方に対して、ロボットという手段を使い、「バリア」を解消するという取り組みは、SDGsの原則にも沿っており、一定の成果が残せたのではないかと思います。いくつもの壁を乗り越えて完成したハグボットですが、篠部君は現在も新しいロボットを制作しています。腕が動く、抱っこすると暖かくなるといった工夫を追加していくようです。これからも継続してバリアフリープロジェクトに取り組んでいく予定です。

開発の詳細は森ラボの下記ウェブサイトもご覧ください。

レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(第1回)

レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(第2回)

レポート「バリアフリープロジェクトにおけるロボット開発」(第3回)